とある人との会話

「あー不眠君ねぇ……(実際こんな風に呼ばれてるわけじゃない)君、一夜置きした方が良いよ」
「なんですかそれ。カレーをおいしくいただく方法ですか?」
「いや、そうじゃなくてねー……。一夜置きってのはねぇ。アイデアを一日寝かせて、翌日冷静になってそれを見直すことを言うんだよねー」
「ああ、それならたまにやりますよ」
「たまにじゃだめだねー……毎回とは言わないけど、基本を一夜置きにしたほうがいいよー」
「まぁ、理屈はわかりますよ。出たアイデアが新鮮で、興奮状態になってるから欠点を見つけるには一日置いて、冷静になる必要があるってんでしょ。けど、それでうまくいったためしがないんですよ」
「あー……不眠君さぁ。君そのネタは、良いものじゃないって事だよねー」
「はぁ……」
「いいかい、本当にいいネタっていうのはねー。一夜置きしても素直に受け入れられるのがいいネタ何だよねー」
「はぁ」
「つまりだねー。本当にいいネタができるのを待つのが、ストーリーテーラーの技術であり才能なんだよねー」
「じゃあ、私は才能がないわけですね」
「いやいやいやいや。そんな事じゃない。そんな事言ってない。そういう訳じゃない」
「はぁー……」
「つまりだねー。一夜置きして、それでも作れる! ってネタが、本当に良い物なんだよねー」
「なるほど。じゃあやっぱり私は才能がない訳ですね」
「いやいやいやいや。そんな事じゃない。そういう訳じゃなくてだねー……」