アンブレラ

 目がさめると外をびゅうびゅうと強い風が吹き荒れてたんで、窓を開けて耳を済ませると町の音と風の音しか聞こえなくて発狂しそうだった不眠蝙蝠です。
 東京は木々の音が聞こえなくて薄気味が悪い。まるで呼吸音も心音も聞こえないのに生きている人間が近くにいるみたいだ。
 
 普通の人が普通だと思っている事をやらないと普通に見られず、気味が悪いと思われるんですが、私としては普通の人が普通だと思って気に求めない事が普通じゃなくて、それが気味が悪いんですよね。
 住宅街とかで耳を済ませると、遠くで車のクラクションとかが聞こえるんですよ。東京はそれがあたりまえで、耳を済ませても何も聞こえないって言うのはある種の異常なんです。正月とかは交通量が激減するので、クラクションが聞こえなくなり、めちゃくちゃ薄気味悪いです。人が歩いてないのが気味悪いとか、そんなの目じゃないくらい。
 それと同じように、どんな場所にいても風が吹けば木々の歌が聞こえるはずなのに、それが聞こえなくてそれをあたりまえと思っているのは、滅茶苦茶気味が悪い事です。雨が降ってぬれないのと同じです。
 『現代人』の作り出したあたりまえと言う価値観の上に私は立つ事が出来ません。人間の作り出した価値観の上にしか立てない愚か者が小説なんぞ書いて良いのかと疑問を抱いたりするんですよ。マジで。