腸と臓物、どっちが暴言に向いてるかな

 不意に小耳に挟んだ残酷な天使のテーゼ。ああ、エヴァ懐かしいなぁ。中学生だか高校生だか。深夜に一挙放送してたのをビデオに録画して見てたっけ。
 そしてふと思う。あれは本当にただのロボットアニメだったんだろうか。
 
 単純に頭の中から『エヴァ=古い』とか『エヴァ=どうしようもないエロ同人の題材』とか、訳のわからない固定概念を取っ払って考えてみよう。
 まずおおまかな話の流れ。
 得体の知れない巨大生物使途。これらと闘うために作られたロボットエヴァンゲリオン。超高高度からの墜落による攻撃や、基地侵入などの…………
 いや待てよ、これは世界観からの流れだ。ここは主人公視点から考えてみよう。
 
 主人公の少年が、連絡すらよこさなかった父親に、突然呼び出されてロボットパイロットになる。そこで出会ったのは無口で考えが読めない同級生の少女。そして、流れるように豪気な年上の女性と一緒に住む事となる。その後出会ったのは二人の親友。そして、もう一人の同級生の少女。こちらは良くしゃべるし活発だが、同じく彼には何を考えているのか読めない。その後、彼は本人の意思とは無関係だが、自分の手で親友を殺そうとしてしまう。しかも、それを仕向けたのは父親だった。そして反発、逃走。後に敵に襲撃され、主人公不在で同級生出撃。ことごとくやられる姿を彼は目にする。しかし、たびたび顔を合わせてはいるが、それほど仲良くは無い。同居している女性の恋人? で同級生の憧れの人。得体の知れない年上の男との話で自分のやるべきことに気付き、再び戦いに赴く決意をする……。
 ん?
 そうか、これはその外見や意味深な世界観のインパクトが強いが、これはこれでしっかりと人物関係が成立しており、主人公『碇シンジ』の成長物語として作られているんだ。
 冒頭の性格から考えたら、途中『親友を殺そうとしてしまう』ところで反発するとも思えない。この自点までで、彼になにかしら変化を与える要因があったと考えられる。
 この要因とは、彼が今まで経験した事の無い出来事及び、経験した事の無い人物との交流が原因にあると思われる。この経験した事の無い出来事とは、ロボットに乗り闘う事。これはまぁ簡単な事だ。じゃあ、この経験した事の無い人物とは誰の事か。
 単純に考えればレイのようにも思えるが、多分そうじゃない。彼を変える切欠を作った『経験した事の無い人物』というのはアスカの事だ。
 見ていれば解ると思うが、彼の反発が目に見えて大きくなっていったのは、アスカのその強引な性格故に、『小さい反発では彼女に屈服され、自分の意志が封殺されるだけ』だったので、彼は『自己主張を徐々にだが強くしなければならなかった』わけだ。
 自己主張の乏しい彼が封殺されるのを嫌った理由。それは、彼女と出会うまでに彼自身ある程度の変化があったことだ。それは、彼の内面的な変化ではなく、彼の周囲の環境による彼自身の一時的な変化。本来ならば、すぐに元に戻ってしまうような性格の変化である。
 それは、絶対的な父性をもった父親が近くにいる。何を考えているか解らないが、多少だが自分が『導く』事をする必要があった同級生。強引に自分を引き回す年上の女性。これら三人の人間が彼の周囲にいることにより、彼はアスカと出会い、『自分が変化する受け入れ態勢』へと変化していったのだと思われる。それは、彼の精神が『冒頭』『ヤシマ作戦時』『アスカと一緒に暮らしてから』と3段階に分けられるからこそ言える事だ。これらの変化は極めて微弱で、キャラクター性をある程度把握しないとわからないが、確実に変化はしているのが解る。
 なにせ、エヴァは主人公の性格を『熱血漢』や『生真面目』なんかにしても、多少強引だが話は進む。あえて嫌われるタイプの性格の主人公にした理由というのは、【世界観・謎・ストーリー展開】故にキャラクターを作ったのではなく、それとは全く別に『元からあった碇シンジとそれを取り巻く人々の物語』とを掛け合わせて、微調整をしたからでは無いのだろうか。
 
 
 とか考えた昼下がり。